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再生医療による視神経の再生について

最近の医学界で注目されている技術の一つが再生医療であることは間違いないでしょう。もともと、ヒトに限らずあらゆる生物の細胞は、元をただせば受精卵というただ一つの細胞であり、それが分裂し分化していくことで一つの個体となるわけです。細胞がいくら分裂しようともその中に含まれるDNAは全て同じものが複製されるわけですから、一つの個体に含まれるあらゆる細胞中には、同じ遺伝情報が含まれているはずです。
これを単純に考えれば、体の一部の組織や器官が損傷したとしても、別のところにある細胞を採ってきて培養することで、元の健康な組織や器官を再生できるように思えます。実際、私たちの体は、怪我をしたり病気になったりして多少傷ついても、自己修復する機能が備わっています。ですが、これは全ての組織や器官ではありません。一度傷つくと自己修復できないものもあるのです。その代表例が中枢神経系です。例えば脳や脊髄の細胞は、一度成長した後に損傷するようなことがあると二度と再生しません。そのために例えば認知症などの病気は治療が難しいものの代表となっているわけですし、交通事故などで脊髄を損傷した人が下半身麻痺で車椅子生活を余儀なくされたりするわけです。
そして、視神経もこの一つです。視神経も中枢神経系の一つで、一度損傷すると自己修復されることはありません。さらに、脳や脊髄の細胞が、体の別の組織の細胞から再生することができないように、視神経についても別のところから持ってきた細胞で修復を図ることもできないのです。その結果として失明に至ったりする人も多くいます。
ところが、このような状況に光を当てる医療技術が再生医療です。普通はある特定の組織に狙って分化させることができない細胞をある特定の条件下で培養することにより、あたかも最初の受精卵であるかのように体のいろいろな組織に分化させることが可能であることが分かってきたのです。これにより、今までは根本治療が困難で、対処療法的な治療しか望めなかった疾患についても、根本治療ができるようになる可能性が開けてきたということができます。
根本治療もそうですが、この再生医療の技術は、病態の解明のためにもかなり重要な役割を果たすと期待されています。例えば目の神経が傷ついて失明に至るような何らかの疾患があったとして、なぜそのような病気になるのか、進行を遅らせたり止めたりするようなことはできないのかを医学的に研究したいと思ったとします。ところが従来の方法ではこれが困難です。何しろ、目の神経の一部を実際に採ったりすると二度と再生しないのですから、多少病気が進行していたとしても容易なことでは採取などできません。これでは研究が困難です。別の、近くにある再生可能な細胞を採ってきて、実験室で培養することで目の神経細胞に分化させて研究しようとしても無理です。別の細胞は神経細胞には分化しないからです。となると、後は実際には組織を採取したりせずに観察するだけに留めるとか、動物を用いて似たような病気を発症させたりすることで研究するくらいしか方法がありません。観察だけではなかなか深いところまでは分かりませんし、動物とヒトとではやはり体の仕組みが異なる部分もありますので、完全な解明は困難です。
ところが再生医療の技術を用いると、体の他の組織の細胞から視神経の細胞を再生することもできます。これによって、何が原因でそのような病気が起こるのか、どんな薬であれば効果があるのかといったことを研究することも比較的容易になります。実際問題として、現時点では視神経の再生医療が実用化されているわけではまだありませんが、近いうちには実用化されることも大いに期待できるでしょう。

中枢神経 , 再生医療 , 視神経 , 認知症