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再生医療を倫理的に行うために必要なこと

再生医療とは、生まれつきまたは病気や事故、加齢などで傷ついたり、失ったりした体の部位や臓器を、患者の体外で培養した細胞や組織を用いて、修復再生し、機能を補完する医療です。従来の医療では、体の部位や内臓が損傷したり、失ったりした場合それを補填する対症療法で治療を行ってきました。重病の場合や身体の一部を失った場合は、投薬や通院が長期間にわたったり、人工透析に代表されるように生涯通院の必要が出てきたりと患者やその家族の負担が大きくなる場合も多く見られます。闘病に伴う経済的・精神的な負担も大きく生活を苦しめる場合もあります。再生医療では、細胞や組織を再生して、人体機能を回復させるという従来の医療とは全くちがった手法で、病気や身体部位の根治を目指すものです。再生医療による根治療法が定着することによって、長期間にわたる投薬や通院を解消して、患者やその家族の方々が通常の社会生活に早く戻ることが可能になると期待されています。

再生医療は、1998年に人の受精卵から、体内の細胞に分化できる多能性を持つ幹細胞の樹立に成功したことがその始まりと言われています。この幹細胞は、ES細胞と名付けられましたが、この時すでに倫理的な問題が提起されていました。それは、ES細胞を得るために受精卵を壊す必要があったからで、治療のためとはいえ受精して生命の萌芽となった受精卵を破壊することの是非が問われたものでした。同様の議論は、人工中絶による死亡胎児の細胞から作られたEG細胞についても起こりました。

これらの倫理的な問題に対して解決を見ることができたのが、日本の中山伸弥教授によるiPS細胞の発見でした。それまでのES細胞やEG細胞とは一線を画し、皮膚等から得られた細胞に4種類の遺伝子を組み込むことによって、多能性を持つ幹細胞を作ることができるという発見は、それまでの生物学的な常識を覆すものでした。このiPS細胞の発見によって、人間の組織を再生するために、新たな生命の萌芽を犠牲にしなければならないという倫理的な課題は解決できました。重要な傷病が組織再生によって根治できるという期待が高まりました。

しかし、その後も再生医療については、様々な倫理的な課題が残されています。特に、iPS細胞による組織の再生についての安全性と長期間にわたる安定性について、臨床的なデータがない中でどのように医療に活かしていくかは、実験的な医療ということで患者やその家族の方々の同意を得て行われていますが、長期間にわたる観察とケアを要します。最先端の医療の確立と患者の人権の両立をどう図るのかという課題です。

またiPS細胞やES細胞から、精子や卵子を製造する研究が進められていますが、それが成功したときにはその精子や卵子を用いて生殖補助医療を行うことについても、倫理的な課題が提起されています。不妊症の男性の細胞から精子を作ったり、不妊症の女性の細胞から卵子を作ったりして、人工授精や体外受精を行うことは適切かどうかは、さらに論議されなければならない課題でしょう。不妊に悩むカップルはそういう形ででも子どもの誕生を希望するかもしれませんが、安全性や信頼性の問題とともに新しい生命の誕生をどのように考えるかという医学上の課題というだけでなく、社会的・精神的・宗教的な課題となるでしょう。

iPS細胞の発見は、従来の医療では不治の病とされている病気で苦しむ人たちには大きな朗報として受け止められています。iPS細胞による治療に大きな希望を抱いている人たちも多くいます。ました。それだけに、多くの倫理的な課題を解決して再生医療を安心して受けられる医療にしていくことに大きな期待がかかっています。

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