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抜歯した親知らずや乳歯が広げる再生医療の可能性

iPS細胞の活用によって人体の失われた機能や臓器を再生させる再生医療の研究が加速していますが、肝心のiPS細胞を効率良くつくるための細胞として、歯科で抜歯された親知らずや乳歯の歯髄から採取された細胞が、近年改めて注目されています。歯髄は歯の内部にある柔らかい組織でいわゆる歯の神経ですが、その歯髄から取り出される幹細胞が歯の再生のみならず、治療が困難とされる脊髄損傷や脳梗塞などの治療にも役立つことに高い期待が寄せられるようになりました。

これまでは廃棄されていた抜歯後の親知らずや乳歯の歯髄から取り出す幹細胞ということで、取り出すためには骨髄穿刺が必要な骨髄や手術が必要な脂肪幹細胞よりも容易に採取できるという点と、その応用力の高さも魅力です。ひと頃、抜歯した親知らずを適切に凍結保存していれば、ほかの歯を抜歯する羽目になった時に移植できるという自家歯牙移植が注目されていましたが、歯髄の幹細胞利用は歯科の分野に留まらず全身の医療に応用可能となり、再生医療全体の進化を加速させる可能性を世に広めました。

抜歯された親知らずや乳歯から採取された歯髄細胞は、抜歯した本人の歯や臓器などを再生させるために役立てられるだけではなく、骨髄のようにほかの人に移植できるiPS細胞の元として利用することが可能と言われています。歯髄細胞由来のiPS細胞は日本人の移植に適している型を約20パーセントの割合で持っているとされ、それと同様のiPS細胞が50株あった場合、日本人の約90パーセント分がまかなえる計算になると考えられています。そのため将来的に骨髄バンクのように多くの人に移植できるiPS細胞を保存するシステムの構築が望まれるほどになってきました。

抜いた親知らずや乳歯を献歯する歯髄細胞バンクのほうはすでに始動しており、脊髄損傷などの治療に役立てるための研究が進められており、近い将来の実用化が期待されています。歯の分野では歯髄こと神経を抜いた歯の中に歯髄幹細胞を移植することで、神経や血管がある歯髄と象牙質を再生させる動物実験に成功しており、歯髄再生治療の臨床研究が本格化しつつあります。

歯の再生という点では、特殊な培養液を使って歯の幹細胞から歯の一部を体外で再生させる実験も行われ、ゆくゆくは培養シャーレなどで歯をすべて再生させることも夢ではないと考えられるようになりました。歯の分野では再生した歯を使って元の歯が失われた場所に移植する技術が進めば、人工物のインプラントや入れ歯を利用する必要がなくなり、歯を失うことによって起こる身体全体の衰えを防ぐことにもつながると期待されています。

歯の幹細胞を様々に応用する研究は、全身の病気や怪我によって失われた身体機能や臓器を再生させる医療の進化をも一層促すという点でも、改めて多くの人々の関心を集めるようになりました。歯の幹細胞による治療効果に関してはマウス等を使った実験で脊髄損傷や筋ジストロフィー、脳や下肢の虚血・心筋梗塞や角膜上皮欠損などへの治療効果がすでに明らかにされていることから、歯科の分野を超えて医療の世界全体で今後の研究が進めて行くことが大きな課題となっています。

歯の幹細胞を有効活用した治療方法の技術が確立され、有効性や安全性も認められた暁には、最も身近な医療機関である歯科が持つ役割が一層の重要性を増し、多くの人の全身の健康を守るために重要な施設となることが予想されるようにもなりました。これまでは抜歯されたのち廃棄されてきた親知らずや乳歯がもたらす再生医療のさらなる進化は、ここ数年でさらに加速していることは明らかです。歯髄細胞バンクを通じて脊髄損傷の治療など実用化に向けて進められている研究が一日も早く日の目を見ることを、多くの人が待ち焦がれています。

ips細胞 , 再生医療 , 歯髄幹細胞 , 移植 , 親知らず